こんにちは。1月ですがここEvanstonは、最近暖かい日が続いております。冬は終わったのではないかと淡い期待を頂いております。
私からは、ヘッジファンドでのインターンからPEでフルタイム就活をした経験をもとに、MBA卒業後、日本関連のバイサイド(VC除く)を目指される方向けに書きたいと思います。
まず、Kelloggについて金融のイメージはないかもしれません。しかし、以下の理由から決して所謂ファイナンススクールに引けをとらないと思います。
● ストラテジー等の授業が役に立ちます。ファンダメンタル分析をベースにした投資においては、投資先のビジネスを理解することが非常に重要です。財務諸表は、企業活動の結果の一つの顕れ方にしか過ぎず、もちろん有益な情報を含んでいますが、それ単独では将来のキャッシュフローを推定するには不十分だと思います。企業の競争優位性、そしてその優位性がサステイナブルなのか評価するには、ストラテジー、オペレーション、マーケティングの理解が必要不可欠であり、Kelloggにはそれらに関する素晴らしい授業が沢山あります。
● 金融志望者が少ないため、コミュニティが密で、且つ、活躍しやすいです。バイサイドで就活する学生もそう多くないため、皆でケース面接の練習をしたり、Stock Pitchの練習をしたり、アイデアを議論したり、ということが出来ます。アメリカ人の学生同士は実際には競合する形になりますが、それを意識させない自然な助け合いの精神のようなものがあります。また、ケースコンペやStock Pitchコンペも学校の代表として出場しやすいです。こうしたコンペはResumeに書けることもあり、ファイナンススクールではコンペに出るために校内で熾烈な競争があり、殆どバイサイド経験者にポジションを取られてしまいますが、Kelloggでは比較的競争が緩いです。その結果、私でも、Kelloggの代表チームの一人としてMBA対抗戦に出ることが出来、同じチームの仲間から沢山のことを学べました。また、金融志望者が少ないことから、教授との関係も築きやすいです。
● 投資に関するExperiential Learningが出来ます。PEに関しては、PE Labという授業で、実際に米国PEファームの一員として、仕事を行う機会が与えられます。アセマネ関係であれば、Asset Management Practicumという授業があり、そこでは、卒業生や著名なInvestorから寄付して頂いた資金を運用する経験が得られます。私はこの授業を取っているのですが、Lou Simpsonという方が新しく寄付して頂いたお金を運用するポートフォリオマネージャーに選んで頂けました。Lou Simpsonは、バフェット及びマンガーと一緒に仕事をされていた方で、投資キャリア30年の平均リターンが20%を超える、こちらでは著名な投資家です。当該資金の最初のポートフォリオマネージャーになりますので、プレッシャーはありますが、Lou Simpsonとのコミュニケーションの中で彼の投資哲学を叩きこまれて、非常に勉強になっております。
● 身も蓋もない話ですが、バイサイド就活については、ある程度バックグランドがものを言いますので、特に日本での就活については、ファイナンススクールに行こうが、ゼネラルマネジメント主体の学校に行こうが、さほど関係ないと思います。
参考のために、Kelloggの弱いところも記載しようと思います。
〇 他の学校には出していて、Kelloggのキャリアセンターには出していない求人があるかもしれません。ヘッジファンド、PEについては、基本オフキャンパスのリクルーティングになりますのでこの点さほどデメリットはありませんが、一部のミューチャルファンドについては、日本株への投資でも日本オフィスではなく、米国オフィスで一括採用するケースがございます。その場合に、Kelloggに求人票を出していない可能性があります。ただ、その場合もオフィシャルサイトのCareerページから申し込めることが殆どですし、日本に拠点のある会社の場合には、転職エージェントを通じて中途採用として日本拠点に直接応募できるので、結局のところ問題ではないかもしれません。
〇 投資の授業が少ない(かもしれない)。他の学校がどのような授業を提供しているのか存じ上げませんが、Kelloggにおいては、グローバルマクロ、コンバーツ、リスクアーブ、コモディティ、クオンツ戦略を学べるような授業はありません。ただ、誤解なきよう申し上げておくと、コーポレートファイナンス関連の授業は豊富です。アセットプライシングモデル、Taxプランニング、M&A会計税務、ディストレスト、国際金融、中央銀行、<マクロ経済などは、夫々テーマごとにフォーカスした授業があります。
その上で、就活(インターン、フルタイム)について具体的に記載したいと思います。まず、アセマネについては以下の通りです。アセマネは、米国等、海外から日本株をカバーするケースもありますので、自ら積極的に会社と接点を持ちに行く必要があります。
■ 基本オフキャンパスです。具体的には以下の機会があります
学校のJob Board / ボストンキャリアフォーラム(年による) / 転職エージェント(フルタイムのみ)
■ Stock Pitchコンペ。コンペは通常、ミューチャルファンドやヘッジファンドから審査員が来ますが、彼らは採用活動を兼ねています。事前にResumeを主催者側に送付する機会もあります。私は、米国のミューチャルファンドから「日本株を始めようと思っているんだけど、興味がないか」ということで、声がかかり、コンペの合間にコーヒーチャットを行いました。同じチームだった友人は数社と本格的な面接をしていたようでした。
■ Asset Management Practicum(AMP)でのコネ。上述のAMPは卒業生や資金を拠出してくれた方々との繋がりが非常に強く、OB会やディナーがあったり、ゲストスピーカーとして授業にいらっしゃる等、ネットワ-キングの機会があります。こうしたタイミングで、Kelloggから人を取りたいから興味がある人は応募して欲しいとの案内があることがあります。
■ その他。自分の投資アイデアを代表メール宛もしくは人事メール宛で送り付けるなど。特にヘッジファンドなどは、「お前がどこの誰かなどどうでもいい。大事なのは投資アイデアだ」というスタンスのところもあります。そういうところは、投資のアイデアを簡潔にまとめて、メールで送ってみるのも良いでしょう。また、過去の学校のJob Boardに乗っていた求人を調べて、今年は求人ないのか、と聞いてみるものよいでしょう。
求められるバックグランドについては、ファームによってかなりスタンスが異なりますので、とりあえず応募してみるほかないのですが、一般的な傾向としては、ヘッジファンドは、外資IBD/リサーチ、戦略コンサルのバックグランドがないと難しい場合が多いようです。一方で、ミューチャルファンドについては、これらに類似した経歴(商社、FAS、会計士、商業銀行など)プラスKellogg等のトップスクールであれば、面接に呼んでもらえる可能性が高いです。特に米国の小さめなミューチャルファンドで日本株見れる人材が欲しい場合には、バックグラウンド不問の場合もあるようです。また、米国においては、CFAは評価される傾向にあります。
面接については、各社違いはありますが、具体的な投資のアイデアが必要です。詳細は、Investment Management Clubで助言がもらえます。また、会社によっては特定の株を与えられて、期限内に財務モデルを作って、Buy/Sellのリコメンデーションしろという形の面接をするところもあります。
インターンからの採用が基本です。フルタイムから応募も出来ますが、その場合にはバックグラウンドとして、バイサイドやIBDの経験が求められる傾向が一層強まります。
一方、日本のPEについては以下の通りです。インターンをしているところは僅かになりますので、基本はフルタイム応募です。また、数も限られるので、アセマネほど自ら探しにいくという感じでもないと思います。
- 基本オフキャンパスです。具体的には以下の機会があります
– 学校のJob Board
– ボストンキャリアフォーラム。正確には、ボストンキャリアフォーラムではなくて、ボストンキャリアフォーラムの時期にボストン市内のホテル等で面接を行います。日本での留学前の懇親会等に出ていれば、応募の案内は来ます。
– 転職エージェント
– その他知人のツテなど - バックグラウンドについては、Large Capについては、投資銀行IBD(カバレッジorM&A)もしくは外資コンサルの経験が必須のように思います。Middle Capであれば、ミューチャルファンド同様に、類似経験プラスTop Schoolで面接には呼ばれるようです。
- 面接については、Behavioral、ケース、財務モデルの3つのパターンがあるようです。いずれも、PE/VC Clubの虎の巻やメンターとの面接練習で対応が可能です。PEからKelloggに進学する学生も多いので、面接の練習は本当に助かります。モデルについては、LBOモデルを学ぶ授業がありますので、それを受講するもの役に立つと思います。
色々なパターンが考えられ、とても網羅的には説明出来ておりませんが、少しでも参考にして頂ければ幸いです。Kellogg出身で投資の世界で活躍されている方も沢山いらっしゃいますので、投資に興味がある受験生の方、Kelloggを強くお勧めしたいと思います。