Kelloggには非常にバラエティーに富んだ選択科目が用意されており、毎学期取りたい授業が取れる単位数(5単位/学期)を超えてしまったり、授業同士の時間帯が重なってしまうことがある為、授業選択のBidding Phaseは皆頭を悩ませることになる。 

そんなKelloggにおいて私が選択した授業の一部を紹介させて頂きたい。 

1. Analytical Consulting Lab – Joel K. Shapiro 

    Kelloggの学生でチームを組成し、パートナー企業に対してData Analyticsを活用してコンサルティングを行うExperiential Learningの授業。パートナー企業が抱えるビジネス課題に対してデータ分析を通じて様々な視座を出していくことが求められる。パートナー企業は学期によって異なるが、事前に学校経由で10数社のパートナー企業が提示したプロジェクトテーマに対して、学生側は生徒間で4-5名のチームを組成して、希望する企業・プロジェクトを選定の上、応募書類を提出。応募者の要件と企業側のニーズと合致すれば、そのプロジェクトに参画することが出来、授業を履修出来る仕組みとなっている。 

    私、データ分析の実務経験がない為、コンサル出身でビックデータ分析を活用するプロジェクト経験があるクラスメイトや、前職がテック企業でのデータアナリティクスの経験があるメンバーのチームに入って、本プログラムに参加した。我々のチームはシカゴを本拠とするプロスポーツチームのプロジェクトに応募し、同チームのホームゲームのチケット価格の最適化プロジェクトに取り組むこととなった。 

    実際のプロジェクトでは、クライアントからチケットの購買データを5-6年分もらい、そのデータに入っていないパブリックなデータも我々で組み込み、チケット価格の変動に影響を及ぼす変数の特定と程度分析を行った。 

    1学期間(約2-3カ月)のコンサルティングプロジェクトであり、週次でクライアント担当者とディスカッションを通じて彼らの意見も交えながら、分析を進めていった。最終的に、クライアントのTicket Salesの責任者であるGM宛にIn-personでプレゼンを行った。学期を通じて、必要に応じて教授からプロジェクトに対するアドバイスを受けることが出来、個人レベルではコンサル実務経験やデータ分析の実務経験を持つメンバーの動きを見たり、アドバイスを受けながら取り組むことで、体感的に理解できる非常に貴重な機会であったと言える。我々が取り組んだプロスポーツチームのプロジェクトのみならず、他のスポーツプロジェクトや、ヘルスケア、Non-Profit等、テーマも多岐にわたっており、個人やチームの興味に応じてプロジェクトが選べる事も非常に良い点であったと思う。授業の一環としての2か月間超の短期プロジェクトなので、データ分析やコンサルティング実務を深く理解するには至らないが、米国企業とプロジェクトに取り組め、リアルな課題に対してデータ分析を伴うプロジェクトの流れや必要なスキルや観点を体感的に理解できるという点において、非常に面白く個人的にユニークな経験が得られたと思う。 

    2. The Rookie General Manager – William J White and Matt Levatich 

      CxOなどのマネージメントロールを目指す生徒をターゲットとした、2年生の最終学期にのみ履修可能な授業。ケーススタディやそのケースと連動した簡単なシュミレーションゲーム、それに付随する知識を提供する講義の組合せをベースして、経験が浅い新任GMが直面しがちな多様な課題を疑似的に体験し、解決するための様々な考え方・知識を得られるように授業が構成されている。 

      授業形式は、何らかのリーダーシップロールにアサインされている新任GMの置かれた状況をケースで理解し、その状況下で求められるいくつかの意思決定を簡単なシュミレーションゲームを通じて行い、その意思決定の思考背景をクラスでディスカッションするという形が多かった。 

      例えば、取り扱ったケースの1つに、ビジネススクールを卒業して大手化学メーカーに就職、同社のリーダーシッププログラムの2年目で同社の1拠点の工場長を任されたという設定のものがあった。そのMBA卒の新任GMは、その工場で各ファンクションリーダー(Purchase Leader、Sales Leaderなど)の上に立って事業計画の達成と、本社が検討するデジタル技術などを導入した新たなイノベーティブな工場オペレーションの構築を導入するモデル工場となる実行体制の準備を行うという2つのミッションが与えられていた。然しながら、その工場は米国の地方都市にあり、従業員のほとんど全員がそのローカルコミュニティで生まれ育ち、ファンクションリーダーのほぼ全員が長年この会社に勤めて経験を持ち、相互に長年で培った人間関係が存在する状況であった。そのため、その新任GMは本社から来たアウトサイダーな人材として、慣れきった現状のオペレーションを変えたくないなどといった思いなどを持っているメンバーを率いて工場の運営や新たなイニシアチブの導入を任されているという設定であった。シュミレーションゲームでは、その新任GMになったと想定して、工場の現状(売上が想定より上がっていない)に対して誰にどの様にアプローチし改善していくのか、新たなイニシアチブの導入に理解を得る為に誰にどの様にアプローチするのかなどが問われた。ゲームは、場面ごとに新人GMの意思決定の選択肢が表示され、選んだ選択肢をベースにシュミレーションゲームが様々な方向・結果に進んでいくというものであった。これらの事前準備を経て行われる授業においては、そのシュミレーションゲーム上でのクラス内の生徒の意思決定を割合が全体に共有された上で、それぞれの選択をした人がその背景にある考え方を説明し、他の意思決定を行った人とディスカッションを行うという形式が多かった。ケースによっては、実際にその新任GMとしてケースに取り上げられた張本人がサプライズで我々のクラスディスカッション後にZoom越しに登場し、当時の意思決定とその結果を語る(+質疑応答)というセッティングの授業もあり、非常に面白い授業であった。 

      Kelloggの授業では珍しく、教授2人体制の授業であり、1人は実務経験を持ちながらも長年マネージメントなどの研究を通じて理論に明るい方、もう1人は米国の上場企業のCEOを歴任された方で、教授の過去の経験からもディスカッションに様々な視点を加える方と役割が分かれており、ディスカッションが盛り上がるようにデザインされていた。 

      Rookie of General Managerというクラスタイトルの通り、新任GMのリアルを疑似的に体感するケースを使って、新任GMとして将来的にCxOを目指していく為に意識しておく心構えやスキルセットを体系的に学べるとともに、クラスの生徒にGMやCxOなどのリーダーシップロールにキャリアの早いうちにチャレンジすることを強く後押しするような授業であり、自分事としてリアリティを持って学びやすく、様々な示唆が得られる良い授業であったと思う。 

      3. Product Management for Tech Company – Birju Shah 

        実践的にProduct Management/Developmentの要諦を学ぶことを目的とした授業。MBAの生徒だけでなく、Northwesternの他学部(Master of EngineeringやUndergradのData AnalyticやEconomics専攻など)の生徒も受講することが可能であった。事実、クラスの3-4割程度がMBA生以外の学生で構成されていた。 

        授業のゴールは、生徒が自分たちで考えたビジネスアイデアをベースにMinimum Viable Productを作ることであった。まず初回授業で、授業を履修する全ての学生がテーマ自由で自分の持つビジネスアイデアを、全員の前で1分間でプレゼンテーションを行った。そのプレゼンイベントの後、参加した学生は、自分のアイデアをベースに7-8名のチームメンバーを集めてチームを作るか、自らが興味のある他の学生のアイデアのチームに参加するかを選択することが出来る。こうして組成されたチームとアイデアをベースに、第2回授業以降、学期を通してプロジェクトを進めることになる。担当教授は、UberやAmazonでSenior Product Managementを務めた経験者で、彼の指導の下、実際にこれらの企業で採用されている新規ビジネスの立ち上げプロセス(思考法や手順、書類など)に沿ってプロジェクトを進めた。具体的には、授業毎に設定されたテーマに沿って進める形となっており、Tech Productの新規事業企画やProduct Managementのプロセスやタームを学ぶ授業から始まり、製品要求仕様書(Product Requirements Document)や市場要求仕様書(Market Requirements Document)について学び、実際にそれらの仕様書を作り、最終的に自分たちのプロダクトのMVPを作れる様に授業がデザインされていた。 

        私は自分のビジネスアイデアに興味を示してくれる他の生徒がいたため、自身のアイデアを基にチームを組み、プロジェクトに取り組んだ。チームを構成するに当たってエンジニアリングやUI/UX設計、製品管理のバックグラウンドを持つ学生が必要であったので、そうしたバックグランドを持つ人にコンタクトし、結果的にMBAの生徒が3名、Master of Engineeringの学生が3名、経済学専攻の学部生が1名のチーム構成となった。このようなチーム構成であった為、プロジェクト進行の際、MBA生で全体のリードや統括ならびにMRDやPRDの技術的な部分以外を担当し、エンジニアリングの学生は製品の具体的な詳細を担当するなど、各々が得意な部分を活かしてプロジェクトを進めた。個人的にはこれまでこういった異なるファンクションの人と仕事をする経験は少なかったので非常に気づきも多く面白いなと思いながらプロジェクトを進めていたが、視点や考え方の違いからコンセンサスを取り物事を前に進める難易度が高い場面も多くあった。チームメンバーはそれぞれ異なる専門分野の経験を持つだけでなく、性別や国籍も様々であり、週に複数回ミーティングがそれぞれ数時間に及んでしまうこともよくあった。役割分担をしてもお互いの成果物のイメージがズレてしまったり、期限に対する意識もまちまちであったりと、様々な難しさがあった。結果として、こういった取り組みを通じてProduct Managementや開発の基本を理解するだけでなく、多様性のあるチームをリードするという経験も得る事が出来て、個人的には非常に学びの多い授業だったと感じている。 


        以上、私の個人的な選択科目の感想でしたが、ご参考になれば幸いです。

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