今回は、KelloggにしかないMBAとMaster of Science in Design Innovationの二重学位制度、MMMプログラムについて紹介します。プロダクトマネジメントの人気増やDX等の流行に伴って、大変人気になっているプログラムのため、先月卒業したTSが2年間の経験をQ&Aでまとめてみました。(カリキュラムCourse Timeline

(こちらの過去記事も是非ご参考ください!「MBAだけじゃない。MMMプログラムとは?(MBA+MS in Design Innovation」)

  • MMMの概要を教えてください!

    MMMは、MBAとMaster of Science in Design Innovation(MSDI)の二重学位制度です。MBAの授業はKelloggにて、MSDIの授業はMcCormick School of Engineeringにて履修することになります。Kellogg、McCormickそれぞれにて必修科目があり、全ての必要科目履修と一定数の選択科目履修が両方の学位取得に必須となります。

    MMMで掲げられるゴールは、顧客を念頭に置いた価値を創造するデザインスキル、且つその価値を持続可能な方法で獲得することができるビジネススキルを持つ、「ハイブリット・イノベーター」の養成です。そのため、ビジネススキルだけではなく、イノベーションを起こす(価値を創造する)ための①デザイン手法、②エンジニアとのコミュニケーション力の習得に力を入れています。①を学ぶために、デザイン手法を用いて実際の企業に対して新しいアイデアを提案するプロジェクトやケースを繰り返し経験することになります。更に、②の習得のために、コーディングやデータ分析の基礎を学んだり、関係者を説得するための視覚的コミュニケ―ションの方法を学んだりすることができます。そして、MBAとMSDIを橋渡しする授業やMBAの授業を通して、創造した価値を持続的に獲得するために必要な、オペレーション、ファイナンス・会計、マーケティング等のビジネススキルを学びます。
  • MMMの学生のバックグラウンド/キャリアゴールの傾向を教えてください!

    MMM生のバックグラウンドの傾向としては、戦略コンサルとテック企業(戦略、セールス、エンジニア、PMM/PM等)出身が大半で、他は非テック事業会社、VC、ミリタリー等出身の人もいました。2YMBAとの違いとしては、投資銀行やPE等の金融業界出身の方が少なめでした。

    MMMに親和性のあるキャリアとしては、プロダクトマネジメント(PM)、コンサルティング(特にデザインコンサルティング)、事業会社における新規事業開発、スタートアップやVCが挙げられると思います。実際に、私のクラスでは、テックPM、デザインコンサルが非常に人気でした。その他、MMMで学習することはアントレプレナーシップとも親和性が高いため、スタートアップへの就職、起業、VCに挑戦する人も多いです。一方で、MSDIで学ぶ内容とは親和性が低い、投資銀行やPEを目指す人は少なくなっています。
  • MMMの特徴的な授業を教えてください!

    Research-Design-Build (RDB)
    デザイン手法の一連のプロセスを、指導を受けながら体験することができます。実際の企業のプロダクト/サービスのUX向上策を提案することをゴールとして、教授の補助を得ながら、ユーザーリサーチの方法、リサーチからインサイトを導出する方法、新しいアイデアをデザインする方法、アイデアをプロトタイプ・テストする方法について段階的に学びます。

    Design Research
    RDBではデザイン手法の一連のプロセスを体験することが目標でしたが、この授業では、ユーザーリサーチについて深堀りします。ユーザーインタビューを行う際のバイアスを取り除くための方法、インタビュー対象/内容の設定方法を学び、実際の企業(シカゴに拠点を置く営利団体)の問題解決のために、それを実践することになります。

    Mindful Product Management (MPM)
    MPMでは、新しいアイデアのデザイン方法、新しいアイデアのプロトタイプ・テスト方法について学びます。「デザイン・スプリント」と呼ばれる集中的にプロダクトをデザイン、プロタイプ、そしてテストする手法を、実際の企業に対するアイデアの提案をゴールとして、実践します。私のクラスでは、UNICEFに対して提案を行いました。

    Business Innovation Lab (BIL)
    全てのMSDIの授業を踏まえて、集大成として、デザイン手法を用いて実際のクライアント企業に対してコンサルティングを行うプロジェクトです。他の授業では最後にプレゼンのみ行うことが多いですが、BILでは、デザインコンサルティングチームとして毎週必ずクライアントとミーティングを行い、主体的にプロジェクトをリードする経験をすることとなります。個人的な見解ですが、デザイン関連の授業は全体的にふわっとしがちで、学んでいる実感が得られなかったりもします。ところが、BILを最後に経験することによって、それまで学んできたことを全て振り返ることができ、MMMでの学びを実感できたことを覚えています。
MMMのカリキュラム
  • MMMは普通のMBAより必要単位数が多いため、忙しいのでしょうか?

    上記のとおり、通常の2年制(2YMBA)と比較して、MBAよりも1学期分多く、1年目は秋学期(8月末~)ではなく夏学期(6月後半~)からスタートします。夏学期にはMBAの必修科目を先取りしつつ、秋学期から始まるデザインシンキングのプロジェクトに向けてMSDIの必修科目も履修します。そのため、1年目に殆どの必修科目の履修が終了します。また、2YMBAと比較して、1学期に履修する平均単位数は殆ど変わりません。
  • MMMだと、普通のMBAで得られる機会を失うことはあるのでしょうか?

    授業に関しては、上記質問への回答のとおり、殆ど機会を失うことはありませんが、2YMBAと比較すると、MBA選択科目の履修数がやや少なくなってしまいます。そのため、アカデミックに力を入れる学生には、毎学期多めに授業を履修している人もいました。また、MBA必修科目は試験を受けることで免除できるので、積極的に免除すればそれだけ多くのMBA必修科目を受けることが可能になります。ですが、MSDIの必修科目はそれなりに多いので、MSDIの分野に関心が高くない人にとっては苦痛になる場合があるため、入学する前にMSDIが自分のキャリア志向に合っているかをしっかり確認する必要があります。私の年には、1年目終了時にMSDIが自分のキャリアにとって不必要と判断し、途中で通常のMBAに切り替える人が数人いました。ただし、途中での切り替えが必ず認められるとは限らないので、繰り返しになりますが、入学前にMBAにすべきかMMMにすべきかをよく考えるべきだと思います。

    ソーシャルに関しては、通常のMBAプログラムの学生たちとの交流機会が減ってしまうのでは?という質問をよく受けますが、全くそんなことはありません。

    MMM生は、1年目の夏学期終了後、2YMBAの学生用に作られるセクションと呼ばれる70人程度のグループにランダムに散らばって入ることとなり、秋学期まで、同じセクションの学生と一緒に様々なソーシャル活動を行うこととなります。この期間を通じて、2YMBAの学生と十分に交流して仲良くなることが可能です。

    唯一失う機会としては、2YMBAのインターナショナル生向けに7月~8月に行われるACEプログラム(英語学習の集中講座)です。MMM生はその期間に既に授業を受けることになるので、このプログラムに参加することはできません。ACEプログラムに参加した学生達はとても仲良くなりますが、残念ながら、そのコミュニティに最初に入ることはできません。1YMBAのインターナショナル生向けには、夏学期前に、ターボACEと呼ばれる似たプログラムがありますが、短期集中となるため、ACEほど強いコミュニティ形成はしにくい印象です。そのため、ACEプログラムの学生たちと交流するためには、誰か知り合いを作り、ACEプログラムの学生たちが開催するイベントに積極的に参加すると良いかもしれません。

    とはいえ、MMM生にはMMMというコミュニティがあります!夏学期は殆どの時間をMMM生のみで過ごすことになり、2年間を通じて多くの授業を一緒に履修するので、とても仲良くなります。何かと一緒にいることが多くなるので、他のプログラムの学生からはCultと言われたりもしていました。

    キャリアサポートに関しては、2YMBAの学生と全く同じ機会を得ることができます。むしろ、MMM生は夏学期に先取りしてサポート(就活相談、レジメ・LinkedInの添削等)を受けることができるので、アドバンテージがあるかもしれません。秋学期以降は、2YMBAの学生が殺到するため、サポートの予約が取りにくくなります。また、MMM生のみに対するMMM卒業生やMcCormickからのキャリアサポートもあります。例えば、MMMの学生用の企業説明会が行われたり、MMM生のみに対するJob Openingsの告知が多くあったりします。このサポートは、特にデザインコンサルティングやPMを目指す人にとっては、とても有益でしょう。
  • MMMは仲良くなりますか?

    繰り返しになりますが、とても仲良くなると思います。1年目の夏学期には、毎週のようにMMM生のみのソーシャルイベントが開催されるので、すぐに全員がお互いに名前と顔が一致するようになります。秋学期がスタートして皆が2YMBAのコミュニティに放たれた後でも、定期的にスモールグループのディナーやMMM生のみのイベントが開催されますし、MMMの必修科目を2年間 MMM生と一緒に受けることになるので、疎遠になることもありません。授業では、毎回チームがランダムに決定されるため、殆ど全員と1回以上は一緒のチームになるので、仕事のチームメイトとして全員を知ることもできます。また、長期休暇には、MMMのグループでの旅行が頻繁に開催されていました。

    MMMの一番の価値はこのコミュニティにあるといっても過言ではありません。卒業後も、何かプライベートやキャリアで関わりたいと思うことがあれば、会ったり話したりすることができる友人を約70人も作れることはとても価値のあることだと感じます。そして、あくまでも個人的な見解ではありますが、MMMは、米国スクールの中では数少ない、人種やバックグラウンドで壁のないコミュニティを作れる環境なのではないかと思います。ビジネススクールのような環境では、色んな人種やバックグラウンドの学生達とネットワークを広げることができる機会に溢れています。一方で、殆どの人にとって、同じ人種やバックグラウンドの人と一緒のコミュニティにいることが心地よく、特に私のような非ネイティブの日本人学生としては、アメリカ人コミュニティに入っていくことは難しいと感じることが多いと思います。ですが、MMMでは、様々な人種やバックグラウンドの人々と2年間も授業やイベントを共にすることになるので、自然とアメリカ人多めのコミュニティに入ることができるようになります。もちろん全てが簡単な訳ではないですが、MMMでは、Comfort ZoneとOut of Comfort Zoneのバランスが取れた非常に良い環境を2年間持つことができるようになると思います! 通常のMBAとは差別化しやすい非常に魅力的なプログラムであると感じますので、ぜひ出願を検討してみてください。一方で、キャリアゴールが合っていないと、退屈な時間を送ってしまうことにもなりかねないため、まずはしっかりとMBAではなく本当にMMMに出願すべきなのかを考えてみてください!この点をしっかり考えることができれば、MMM出願に必要なエッセイも書きやすくなると思います。

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