男女のバランスがとれたチームの方がよい成果を発揮する

Kellogg Insight SEP13, 2022掲載

“Previously published in Kellogg Insight. Reprinted with permission of the Kellogg School of Management.”


科学者のチームでは、「男性と女性の両方を含めることが成功の秘訣」であることが、新しい研究で明らかになりました。

現在の科学研究はチームスポーツのようなものです。

過去50年の間に、大規模な科学研究チームがますます一般的になってきました。これらの大規模チームは小規模なチームよりもよいパフォーマンスを発揮し、他の学者による引用回数が多い優れた研究を発表しています。これは、ケロッグ経営大学院教授のブライアン・ウッツィ(経営・組織論を担当)とベンジャミン・ジョーンズ(企業戦略を担当)が2007年に発表した論文の重要な発見事項です。

現在研究者たちは、チームの規模だけでなく、その構成にも注目しています。ウッツィとジョーンズは新しい研究の中で、チーム内の男女が混ざっていることが重要であることを発見しました。ノートルダム大学のヤンヤン、ニューヨーク大学のユアン・ティアン、ミシガン州立大学のテレサ・ウッドラフの共著論文によると、男女混合のチームは、男性のみや女性のみのチームよりも斬新で影響力のある科学研究を生み出すといいます。

実際に、「男女のバランスがとれているチームほど、よい結果を出しています」とウッツィは述べます。つまり、「科学研究では、男性と女性の両方を含めることが成功の秘訣なのです。混ぜた方がよいのです」。

性の多様性に富んだチームはよりよいパフォーマンスを発揮する

ウッツィとジョーンズらは、2000年から2019年に出版された660万本の生物医科学分野の論文を、著者名から性別を推測するアルゴリズムを使用して分析しました(この方法は不完全で、性表現やアイデンティティの複雑さを捉えることはできないものの、極めて効率的な方法であり、医学部教員の男女構成に関する公式データと一致する数値が得られました)。

研究者たちは、次に各論文の発表時の影響力と斬新さを計算しました。影響力は論文の被引用回数で測定し、その年の被引用回数が上位5%の論文を高被引用論文としました。

研究者たちは、各論文に含まれる引用を調べることで、斬新さを測定しました。「ある論文の引用文献のセクションでレオナルド・ダ・ヴィンチとアインシュタインが引用されており、アインシュタインとレオナルド・ダ・ヴィンチは他の多くの論文でもともに引用されている場合、私たちはそれを従来の組み合わせと見なしました」とウッツィは説明します。「しかし、科学論文の引用文献においてアインシュタインがマヤ・アンジェロウとともに初めて引用されているとしたら、それは斬新な組み合わせ」であり、新たな知識の進展を示唆するものです。研究チームはこの引用情報を使って、データセットに含まれる各論文の斬新さの「スコア」を算出しました。

男女混合チームは、斬新さと影響力の両面で同性のみのチームを大きく上回っていることがわかりました。

6人以上の研究者からなる男女混合チームは、同じ規模の同性のみのチームと比較して、斬新な論文を生み出す確率が9.1%高く、被引用回数の多い論文を生み出す確率が14.6%高いことが分かりました。しかも、男女のバランスがとれたチームの場合に、斬新さと影響力は最も高くなりました。つまり、男性3人と女性3人のチームは、男性4人と女性2人のチームよりも斬新で被引用回数の多い研究を生み出す可能性が高かったのです。

「性の多様性がもたらす利点はいわば隠されており、隠されているからこそ、これまで十分に活用されてこなかったのです」

ーブライアン・ウッツィ

次に研究者たちは、チームの科学研究の成果に影響を及ぼしうる性別以外の様々な要因を考慮した場合も、これらの発見事項が引き続き妥当するかどうかを検証しました。

たとえば、男女混合チームの方がより広い専門分野をカバーしているという可能性があり、それが、男女混合チームの研究がより斬新に見えることの説明となりうるのではないかと考えました。これには確かにいく分かの真理があることがわかりました。「男女混合チームの方が、専門知識にいっそうの多様性が見られる傾向があります」とウッツィは述べます。「しかし、それでもなお、男女混合チームというだけで斬新さの特別な上昇が見られるのです」。

また、著者の職業的ネットワークの規模やチームの地理的多様性、どの研究分野であるか(循環器学や神経学など)を調べても、男女混合チームの利点は変わりませんでした。

研究者たちはさらに、他の科学分野におけるチームの男女構成比について予備的調査を実施しました。医学以外の18の科学分野で発表された2,000万本以上の論文を調べたところ、医学だけではなく、過去20年間にすべての科学分野で発表された論文に同様のパターンが見られることが判明したのです。

性の多様性は創造性を高める

この研究では、なぜ男女混合チームの方が同性のみのチームよりも優れているのかという問いを直接問題にしてはいませんが、ウッツィにはある一般仮説があります。「性別は、科学者がアイデアを創出し、その中から追求すべき最善のアイデアを選択するプロセスに影響を及ぼすと考えられます」と、彼は言います。つまり、性に多様性があるグループの方が、アイデアの交換が活発で、創造的かつ建設的なものになるのではないか、というのです。

利点に関する正しい理由が何であれ、ウッツィは自分の研究にこの利点を最大限に生かそうとしています。たとえば彼の研究室では、研究チームの性の多様性を確保するように配慮しています。「私はそれがよい結果をもたらすと感じていますし、プロセスをより創造的で楽しいものにするのに役立っていると思います」と、彼は述べます。

男女混合チームは増えてきてはいるものの、まだまだ少ない

しかし、誰もがそうしているわけではありません。研究者たちによると、2000年から2019年にかけて、男女混合の4人組チームの比率が60%から70%に増加するなど、男女混合の比率が増している一方で、性別を考慮せずチームを編成した場合に想定される数よりも、まだまだ少ないことがわかりました。

研究者たちはこれを定量化するために、医学の細かな専門分野、チームの地理的多様性、著者の被引用回数などの要因を一定に保ちながら、チームをランダムに編成する理論モデルを開発しました。このモデルによって、男女混合チームは17%も数が少ないことが明らかになりました。 「性の多様性がもたらす利点はいわば隠されて」いると、ウッツィは述べます。そして、「隠されているからこそ、これまで十分に活用されてこなかったのです。よりよい科学研究を行うために、この潜在力を秘めた方法を利用していないのです」


FEATURED FACULTY

Yang Yang

Previously a Research Assistant Professor at Kellogg

Benjamin F. Jones

Gordon and Llura Gund Family Professor of Entrepreneurship; Professor of Strategy

Brian Uzzi

Richard L. Thomas Professor of Leadership and Organizational Change; Co-Director, Northwestern Institute on Complex Systems (NICO); Professor of Industrial Engineering and Management Sciences, McCormick School (Courtesy); Professor of Sociology, Weinberg College (Courtesy)

ABOUT THE WRITER

Susie Allen is a freelance writer in Chicago.

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